ヨガの八支則(はっしそく)とは、聖者パタンジャリが説いた「ヨガスートラ」に書かれている、ヨガの基本的な教えです。
「ヨガ哲学」として、生活の中でどのようにヨガを実践していけばよいのか、実践方法を8つの段階で書かれています。
ヨガの八支則(はっしそく)の内容や実践方法、アシュタンガヨガとの関係を分かりやすくまとめました。
目次
ヨガ八支則とは
八支則とは、ポーズだけではなく、生活に取り入れるべき、8つの方針です。
それぞれの日本語訳については、本や人によって若干の言葉の選び方に違いがあります。
英語ではEight Limbs(Eight=Ashta、Limbs=Anga)と言われます。
Yama(ヤマ:禁戒)
Yama(ヤマ)とは、日常生活の中で、他人や物に対して控えるべき5つの心得です。
① Ahimsa(アヒムサ)
人や生物を物理的に傷つけることだけでなく、言葉を使って精神的に傷つけてもいけないとされています。
② Satya(サティヤ)
他人に対して、そして自分自身に対しても嘘をつかずに、誠実にいること。
③ Asteya(アステーヤ)
人から物を盗む(泥棒)だけでなく、必要以上に物を買い占めたり、所有したりしない。
④ Brahmacharya(ブラーマチャリヤ)
食欲、物欲、性欲など、欲望に惑わされないようにすること。
快楽にふけることを節制する練習です。
⑤ Aparigraha(アパリグラハ)
執着をせず、必要以上のものを手放すことで、嫉妬や心の煩わしさから解放されると言われています。
Niyama(ニヤマ:勧戒)
日常生活の中で守るべき、勧んで行うべき5つの心得です。行動と精神的なものと両方があります。
① Shaucha (シャウチャ)
自分の体だけでなく、生活の場、周囲や心も清潔に保つこと。
② Santosha(サントーシャ)
与えられたものに満足し、足りているということを知ること。
今あるものに感謝をし、シンプルな満ち足りた生活を楽しめる練習です。
③ Tapas(タパス)
問題や課題から目を背けずに、練習をすること。
④ Swadhyaya(スワディヤーヤ)
経典や自分自身に対する学びを深め、精神の成長や向上を目指すこと。
⑤ Ishvarapranidhana(イシュワラプラニダーナ)
人や自然、あらゆるものに感謝し、献身的な気持ちをもつこと。
この「ヤマ・ニヤマ」の教えは、すぐにでも生活の中で実践しやすい心構えです。
Asama(アーサナ:坐法・ポーズ)
八支則の3つ目は、ヨガのポーズです。
瞑想の準備として、身体に意識を向けて整えるものとされています。
Pranayama(プラナヤーマ:呼吸)
ヨガの呼吸法です。
意識をして呼吸を行うことで、全身にエネルギーを伝え、心と体をつなぐ役割があると考えられています。
ポーズと呼吸法が、一般的にヨガスタジオで行われるものと言えます。
プラティヤハーラ(感覚の統一)
五感をコントロールすることです。
外側からの喧騒から五感を切り離して、常に安定した精神を保つことです。
Dharana(ダーラナ:集中)
意識を一つのことに集中させて動かさないことです。
瞑想へ繋がる精神状態の最初のステップと言われています。
Dhyana(ディアナ/ディヤナ:瞑想)
瞑想。何か1つに集中することもなく、深い静かな心でいられる状態です。
Samadi(サマーディ:三昧)
瞑想を超えた究極の状態。至福、悟りとも言われます。
ヨガの最終的な目標の地点です。
実践方法とは
ヨガの八支則の実践方法の覚え方は、まずは1ステップずつ、挑戦してみることしかありません。
まずは生活の中での「自分の在り方」「他人に対しての接仕方」などの「ヤマ」・「ニヤマ」。
毎日ちょっとしたことへの感謝の気持ちや、身の回りを清潔に保つなどの意識を持ってみましょう。
次の段階として、実際に瞑想する身体の準備を整える「アーサナ」と「プラナヤーマ(呼吸)」。
ヨガスタジオに行ってもいいでしょうし、自分で練習することもできます。
最後に、心理状態の訓練として、「ダーラナ」「ディヤナ」「サマーディ」に進んでいくのが理想的でしょう。
最後のステップがもっとも難しいとされています。
ライフスタイルの中に、5分でも座ってゆっくり気持ちを落ち着かせる、一つに集中する時間などを取ってみるといいでしょう。
習慣づけることで、短い時間で集中することができるようになり、そこから瞑想状態へステップアップできるかもしれません。
ヨガの10の教えとは
「ヨガの10の教え」、「ヨガ十戒」という言葉も最近ではよく耳にします。
この二つは、「Yama(ヤマ:禁戒)」と「Niyama(ニヤマ:勧戒)」のそれぞれ5つの項目の合計10個を示したものです。
ヨガのポーズができなくても、スタジオに通わなくてもできる「ヨガ」、生活を豊かにする「智慧」として多くの人に実践されているようです。
仏教にも「十戒」という、見習いの僧侶・小僧が守るべきとされる10個の戒律があるため、日本人には馴染みやすいのかもしれません。
八支則とパタンジャリ
ヨガの八支則は、ヨガの経典の一つ、「ヨガスートラ」に書かれているものです。
「ヨガスートラ」は、聖者パタンジャリが、2500年以上も前に編成したものです。
それまでは、ヨガは口頭でのみ、伝えられていましたが、「ヨガスートラ」によって初めて、ヨガが文字で多くの人に伝えられるようになりました。
パタンジャリは、ヨガの祖であるシヴァの命令で、ヨガを伝えるために「ヨガスートラ」を全4章、195の教えとして書きました。(執筆者は複数という考えもあります)
この中に、瞑想を深めるためのステップが8支則として記されています。
アシュタンガヨガとの関係とは
アシュタンガヨガでは、特にこの八支則を重視しています。
アシュタンガヨガの「Ashta」は、サンスクリット語の「8」という意味があります。
この八支則に沿って行われるヨガ流派であり、名前もそこから由来されていると言われています。
アシュタンガヨガは、ポーズだけでなく、「生活の中でヨガの哲学をどのように生かすか」に重きをおいたヨガスタイルです。
その他のアシュタンガヨガの特徴についてはこちらを参考にしてください↓
ヨガ哲学を実践してみよう
ヨガの哲学は、「難しそう」というイメージがあるかもしれません。
しかし、八支則のうち特に「ヤマ」「ニヤマ」は、毎日の生活の仕方、考え方を変えることで、すぐに実践が可能です。
覚え方もよく聞かれますが、無理に名前を覚える必要はありません。
ただ、考え方を理解して、ちょっとした生き方の智慧として、ぜひヨガの哲学を取り入れてみましょう。
ヨガ哲学や八支則を、深く知りたい方におすすめの本はこちらです。
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